防犯 鍵からのご提案
石油業法に守られる一方、それに縛られもしてきた石油業界を「開放」、一段の競争状態にして、「国際的に遜色のないサービス水準の実現を図る」のがその主眼となっている。
そこに流れる考えは、できるだけ市場原理に委ねていこうというものといえる。
石油業界も「市場原理に基づき、強靭な企業体質を作る」と正面から受け止めている。
表面的には、妥当な結論といっていいのかもしれない。
一方、今後、石油製品で競合相手となる韓国は五製油所、精製能力同二百五十万バレルとなっており、韓国と日本の効率化の格差は歴然である。
日本の設備過剰はまちがいない。
九六年に石油製品の輸入自由化が実現、アジアの石油製品が日本の石油製品のライバルとなった。
今回のガソリン乱売合戦はこれを恐れた石油会社が防戦のために自ら作り出した自業自得の状況でもあった。
それでも、「日本に日本の石油会社が存在する理由はどれほどあるのだろうか。
日本が魅力ある市場であれば、問題ない」というエネルギー政策当局の意思を知れば、石油業界のまなじりを決しての競争を笑うことはできない。
しかし、政策当局がいう市場原理は自らをもむち打つ結果となっている。
石油公団問題の浮上だ。
石油公団が抱える一兆円を超える不良債権が「このままでは国民負担に跳ね返る」とされ、九八年夏、総裁は更迭、融資・投資の見直し作業が行われた。
そんな通産省に石油業界を責める資格はない。
石油公団の現状はそれこそ通産省が市場原理を無視して、石油開発という成功率の低い極めて官険的なビジネスを公的資金でやみくもに推し進めてきた結果という側面が否定できないからだ。
原油価格の急落、急激な為替変動など不可避的な要因があったという石油公団の言い分にも一理あるし、一定度は理解できる。
こうした矛盾が最も集約された形となったのは、石炭鉱業審議会がこれも九八年六月初めに出した報告書、答申だった。
焦点は今、日本に残る二つの炭鉱の行方だったが、これは九九年まで見送られ、国内石炭の価格のトン当たり千二百円の引き下げが決まった。
しかし、それでも国内の石炭はトン当たり約一万二千円。
その競争相手である海外石炭はその半分の約六千円にしか過ぎない。
この世点は同内石川氏を引き取る電力業界などが負担することになる。
これは今に始まったことではなく、国内石炭保護の観点からの従来の方式であり、通産省の市場原理の視点からすれば大きな矛盾を抱えたエネルギー政策だった。
この結果、電力業界は年間三円億円前後の不合理な負担を強いられることになる。
見方によっては理不尽な負担ということさえできよう。
むろん、これにも長い歴史的な背景がある。
戦後の復興期には黒い、ダイヤモンドと持てはやされたのが石炭だった。
戦後復興のエネルギーはこの石炭だったことも事実であり、それが石油の登場というエネルギーの流体革命を経て、その存在意義を失う。
石油危機で再びその存在価値が再認識されたが、それは海外から輸入される海外炭だった。
国内炭鉱は衰亡を続け、残すは国内に二つだけとなっている。
同内炭保護の理山について、石鉱審報告は、「すでに一次エネルギーの〇・五%で量的役割は相当縮小したが、海外への技術協力などに貢献している」と強引とも思える説明を展開する。
だが、その当時すでにその電気料金の引き下げが電力業界の最も重要な課題であり、電気事業審議会は中間報告で大口需要家に対する電力の小売り自由化を妥当としていたのである。
電力の自由化が海外で急速に進み、イギリス、ノルウェーなどを皮切りに、アメリカなどでは家庭用を含めての自由化が始まるなど、世界の潮流になってきていることは事実である。
わが国でも、電力の生産段階、卸市場は自由化が実現し、石油業界や鉄鋼業界が参入を開始した。
石油会社や鉄鋼会社が作った電気が家庭のテレビ、ラジオで使われる時代になってきている。
これがいわゆるIPPといわれるもので、電力は生産段階の自由化が実現、さらにそのIPPが遠隔地にある自社工場へ電力会社の送電網を使って送電する、いわゆる自己託送も始まっていた。
わが国なりの電力自由化はそれなりに進んでいるのだが、目下の課題は、さらに自由化を進め、このIPPが自社工場などばかりか、どこへでも、一定度の規模の需要家でさえあれば自由に電気を売れるようにする大口自由化の是非となってきていた。
IPPの地球温暖化問題への対応が表面化するなど、一直線に進む論議にブレーキがかかったためだが、自由化は電気料金を二〇〇一年までに国際的に遜色のない水準にするという経済構造改革行動計画の方針にそったものだ。
日本全体の経済構造改革の流れのなかで、電力も例外ではありえないだろう。
しかし、論議が性急に過ぎないだろうか。
電力自由化が進むイギリス、ノルウェー、それにアメリカは資源保有国だ。
エネルギー分野での多少の冒険主義は許されるが、日本ではどうか。
日本は一次エネルギーの約八割を海外に依存している。
同列の議論でいいのかどうか。
問題があった場合はその責任主体はどこになるのか。
通産省が主体的に責任も持つとみなされる分野、石油開発問題や石炭問題では、市場原理を無視し、一方の石油精製、電力という分野では自由化を求めるというのでは、あまりにもF印刷に満ちたご都合主義に過ぎる。
こんな矛盾が調整されることが期待された総合エネルギー調査会の中間報告でも、大きな議論もなく、矛盾はそのまま抱え込まれてしまっている。
二〇〇八年から二〇一二年の聞に九〇年比六%の温暖化ガス削減達成が主眼となり、エネルギー問題の本質をさらに暖昧にしてしまったからだ。
市場原理に基づく価格引き下げによって需要喚起を誘導しながら、一方で強力な省エネルギ!の推進をうたい、さらには未知数の新エネルギーへの期待を膨らませるなど、美辞麗句のなかに問題は完全に埋没してしまった。
注目のひとつだった原子力発電は基準ケースでは稼働率七八%で二十基、稼働率八三%では十六基としているが、これは数字の上のことで、電力の自由化がこのまま進めば、立地難だけでなく、コストを理由に大幅な遅れ、ないし停滞が起こることは必歪だった。
それに原油価格の下落で一度は苦境に立たされた新エネルギーに大き・な期待が寄せられているが、これが結果的に巨額の財政負担に繋がらない保証はどこにもない。
すでに、この分野がM第二の石油公団になることを強く懸念する声がある。
いうまでもなく現実は学者が唱える理論・理屈からすれば矛盾に満ちたものである。
消えかかる国内炭鉱にしても、本当にその技術を日本から永久に消していいのか、という疑問が残る。
石油開発には資金が必要であり、自主開発原油が安定供給に不可欠という側面も否定できない。
万事が市場原理の呪文でこと足りるというわけではない。
フランスでのサッカー、ワールドカップの日本関連試合だけで原子力発電二基が稼働したのに相当する電力がテレピ観戦で使用されたと推定されている。
エネルギーは生活に関わる問題であり、単純な理論にのって実験する場ではない。
現状の迷走するエネルギー政策には大きな懸念を示さざるを得ない。
原子力発電政府は二〇〇〇年度からエネルギーの長期需給見通しの見直し作業に入った。
原子力発電をどう位置付けるかが最大の課題となる。
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